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  • Kaori Higashide

あなたの「野望」は何ですか

病院に勤務していた頃、後輩の先生と一緒に当直をしていた時の話です。

その日はバタバタとしていて、深夜になって、もそもそと2人で遅い夕食を食べていました。


後輩の先生(以下、こ):あの〜、先生の野望って何ですか?

東出(以下、ひ):え?野望? あの、信長の、とか、そういう・・?

こ:?? 何のことですか。

ひ:いや、特になくて、そうですね、平穏な日々をおくれたらそれで・・。

こ:平穏、うん、それもいい野望ですね。


野望というと大袈裟ですが、おそらく、後輩の先生は、「願望」とか「希望」といった意味で質問されたようでした。


当院の問診票には、

【「こうなるといいな」「これがやりたい」と考えていることがあれば教えてください】

という項目があります。

みなさん、色々な記載をしてくださいます。

「もう一度仕事をしたい」「手芸を再開したい」「子どもと楽しい時間を過ごしたい」

「電車で旅行に行けるようになりたい」「友達を作りたい」「お金に困らないようになりたい」「穏やかな日々を過ごしたい」

本当にそれぞれで、その人らしさが光っています。

一方で、空欄の人も多いです。今はそれどころではない、という心境なのかもしれません。


先日、ある専門家のネット記事を読んでいたら、心療内科・精神科は、今ある症状を、対症療法的な薬を処方して改善するところであって、心の悩みや生活上の困りごとを話すところではない、と書いてありました。限られた時間の中で、結果的にそうなっている精神医療サイドの問題は確かにあるのですが、大抵の症状は、心の悩みや生活上の困りごとと無関係なはずもありません。

この苦しい症状を改善したい、という願いの先には、本当はこんな風に生きていきたい、という「野望」があります。

心療内科・精神科は、とどのつまりは、こういった「野望」を叶えるために、そして、それを考えることができない状況の人が「野望」を語れるようになるために、存在しているような気がします。


ちなみに、後輩の先生が語った「野望」も、とても素敵なものでした。今は遠方でお仕事をされているようですが、野望が叶うといいなと思っています。


雨に濡れる鈴蘭









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