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  • Kaori Higashide

苦手な場面にチャレンジする

今回は、パニック障害の認知行動療法のお話です。

パニック障害とは、突然の、心臓のドキドキ、息苦しさ、めまい、吐き気などの自律神経系の発作の繰り返しによって、生活に支障が出ている疾患です。発作は、数十分でおさまりますが、人によっては、このまま死ぬのではないか、と強い恐怖を覚えます。

特に、電車などの乗り物や、トンネル、美容院、映画館など、その場から逃げにくい状況で起こります。

そして、また同じようになるのではないか、と不安が強くなり、その場面がより苦手になって、回避してしまうことがあります。

病状は、不安はあるけれど、何とか乗り物に乗れている人から、1人では外出できない人まで様々です。


治療の基本は、薬物療法と認知行動療法です。薬物療法は、抗うつ薬を飲みながら、抗不安薬を頓服で飲む形が多いですが、薬はなしで、認知行動療法だけで改善を目指す人もいます。


認知行動療法では、まずはじめに、パニック障害の症状のメカニズムを理解してもらいます。恐怖や不安は、生物が進化していく中で獲得した、生き延びるために必要な重要な反応です。パニック発作は、危険ではない場面で、危険が迫っていると脳神経系が誤作動を起こしている状態です。

その上で、苦手な場面の中でも、最も不安が小さいものから、チャレンジする計画を一緒にたてます。(例えば、西武池袋線の平日空いている時間に1駅乗る→不安20点、など不安のレベルを話し合って決めます)。

チャレンジする前に、もし苦しい発作があった場合にはどうするか、不安になりにくくする工夫(呼吸法、音楽を聞く、外を見る、ゲームをする、ガムを噛むなど)も話し合っておきます。

そして、実際に苦手な場面に暴露(チャレンジ)した際に、その前後で、不安はどう変わったかを点数化して実感してもらいます。

認知行動療法は、ある意味失敗はないと言われています。不安発作が起きずに、案外できた、となることも多いですが、もし不安になったとしても、失敗ではありません。

チャレンジする課題が、今はまだ難易度が高すぎたのかもしれません。課題をアレンジして、次のチャレンジに必ず活かせます。

少しずつ段階的にチャレンジしていくことで、生活の支障となっていることを減らしていきます。


患者さんが、苦手な場面にチャレンジされることは、大変勇気がある行動だといつも思います。病気にかかった時は、なぜ出来ないのだろう、不安になるなんて自分はダメだな、と自信を失うこともあります。自分で何とかコントロール出来そうだ、と自己効力感を取り戻し、やりたいことが出来るようになる事が、治療の目標です。


森の木







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