愛着形成と生きづらさ
- Kaori Higashide
- 4月16日
- 読了時間: 2分
「自分は愛着障害でしょうか」と外来で尋ねられることがあります。愛着障害の診断は、正確には小児に関する診断名ですが、子どもの頃に、親など養育者との関係に問題があり、愛着の形成がうまくいかなかったことで、大人になった今も、生きづらさを抱えている人はたくさんいます。
小さい時の、無条件の愛情によって、愛着形成が十分ある人は、「自分はそのままで生きていていいのだ」という自己肯定感を持つことができます。愛着の問題は、虐待やネグレクトなどの不適切な養育があった場合におきますが、より広い意味で見ると、例えば、良い子でいる時だけ溺愛された、というような場合にも、愛着の形成不全が起きてきます。そして、大抵の場合は、親自身も生育の中で愛着の問題を抱えていることが多いです。
もし、何らかの愛着形成の問題を抱えたまま大人になると、根っこのところで自分への愛着、他の人への愛着が持てなくなります。人との距離が分からない、怒りなど感情コントロールができない、人の目を気にしすぎる、ちょっとしたことでひどく落ち込むなど、こころが不安定になることがあります。
今現在起きている症状から、うつ病、不安障害、摂食障害、依存症など病名がつきますが、その背景として、愛着の問題が深く根ざしている人も少なくありません。また、時には、対人関係の構築の難しさから、発達障害のような病状にみえることもあります。
「小さいころの体験は変えることができないから、自分はよくならないのではないか」と考えてしまう人もいます。しかし、愛着の再構築は、大人になってからも時間をかけて作ることができます。はじめの一歩は、自身の愛着の問題に気がつくことなのだと思います。そして、なかなか難しいことかもしれませんが、ここまで生き抜いてきた自分を好きになることです。アナ雪ブームの時、主題歌が流行りましたが、「ありのままの自分を好きになりたい」という歌詞が多くの人のこころの琴線に触れたのだと思います。あなたが自分自身を認めてあげることが少しずつできるようになり、他の人に、適度に甘えられるようになると、ゆっくりと人との絆が変わっていくかもしれません。
あなたは、今日1日を何とか終えた自分に、そして健気に生きていた小さい頃の自分に、どういった声をかけてあげたいでしょうか。
